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巨額の損害賠償請求・司法書士や税理士へ余り過ぎた弁護士が襲いかかる時代 否認や非弁の無料鑑定・公認会計士資格 飯田はじめ03-6265-6349このブログは飯田の個人的意見です

「後継ぎ遺贈型受益者連続信託も遺留分減殺請求の対象となる」(同書513頁)とされており、信託で遺留分減殺請求を防ぐことはできない。

司法書士の独自説????

 

家族信託活用マニュアル 単行本 – 2015/12/10河合 保弘 (著)

商品の説明 内容紹介相続や事業承継の問題で、現行民法の範囲では所有者の納得のいく対策を講じられないケースが増え、民事信託(家族信託)を活用して対策を講じようとする動きが広まりつつある。 本書は、家族信託の仕組み・活用法の解説とともに36類型の活用事例を紹介。どの類型が相談者に適するかを診断できる「家族信託活用チェックシート」や、見積書、家族信託設計書案、契約書案なども収録した、家族信託活用の提案、実務に関わろうとする人に役立つノウハウ&ツールが満載。 内容(「BOOK」データベースより)

36項目から選べるチェックシートで共有不動産、隠居、認知症、争続、家督承継…etc対策ができる!

著者について河合保弘(かわい・やすひろ)司法書士法人ソレイユ・共同代表司法書士 企業再建・承継コンサルタント協同組合(CRC)常務理事 宮城県亘理町観光親善大使 1993年に司法書士登録、2013年に同職の杉谷範子と共に司法書士法人ソレイユを結成。予防法務とリスクマネジメントを専門とし、個人の財産管理や中小企業の企業再生・事業承継のために民事信託や遺言、種類株式等を駆使した総合的支援を主業務とする。近年は出版と講演に注力し、後継者の育成に努めている。著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)河合/保弘司法書士法人ソレイユ代表司法書士。企業再建・承継コンサルタント協同組合(CRC)常務理事。宮城県亘理町観光親善大使。1993年に司法書士登録、1996年より大阪市で同職の長田弘子と長田・河合市民法務総合事務所を開設、2013年より千葉県市川市で同職の杉谷範子と司法書士法人ソレイユを結成、2015年より東京都千代田区に本店移転して現在に至る。阪神大震災での経験から、予防法務とリスクマネジメントを専門とするようになり、最近は特に家族信託と種類株式を中心とする個人の財産管理支援、中小企業の事業承継支援に注力し、資格に関係なく総合的な活動を行っている(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

 

著者は、本書で、信託を使えば遺留分減殺請求が防げる旨、繰り返し述べる。
 例えば、「これらは、民法上に遺留分制度が存在している限り、遺言では完璧な対応が不可能な部分です。」「家族信託は、これらの各ステージの悩みに対して、たった1枚の契約書で対応できてしまうのです。」(以上、本書34頁)、「民法上の相続制度の不便で不自由な部分をまったく気にしないで、所有者が自由に家族信託契約をすることができるということは、間違いありません。」(本書41頁)として、読者に、信託が遺留分減殺請求を防げる制度であるとの期待を抱かせる。 そして、「遺留分対抗型信託」という活用事例を挙げ(本書178頁)、「Cさんが遺留分減殺請求をしてきたとしても、信託法91条に基づく受益権消滅の規定により遺留分減殺請求権が発生しないと主張でき」るという(本書181頁)。 しかし、学理上、「当然ながら信託が民法上の規定すべてに優越するということにはならない。たとえば、民法上の遺留分の規定に抵触することは許されない」(『信託法【第4版】』(新井誠)91頁)、「後継ぎ遺贈型受益者連続信託も遺留分減殺請求の対象となる」(同書513頁)とされており、信託で遺留分減殺請求を防ぐことはできない。このことは学者の共通認識となっており、例えば、信託に係る遺留分減殺請求について学説を紹介した『成年後見制度―法の理論と実務〔第2版〕』512頁以下を読めば、信託に対する遺留分減殺請求を否定する説など存在しないことが分かる。
 なお、著者は、「万に一つ裁判所がCさんの遺留分を認めたとしても」(本書181頁)としているが、万に一つどころではなく、学理上、遺留分減殺請求は確実に認められるのであるから、裁判所が遺留分減殺請求を否定する可能性はほとんどない。 また、著者は、「遺留分給付型信託」という活用事例も挙げ(本書174頁)、親不孝な子どもCさんには賃料等の4分の1を給付すれば、それ以上の給付を行う必要はないとする(本書177頁)。
 しかし、後継ぎ遺贈型受益者連続信託の場合、第2受益者が条件付で受益権を通じて取得する相続財産も、遺留分の算定の基礎に含まれるから(前掲『信託法【第4版】』513頁)、Cさんに4分の1を給付しただけでは、第1受益者の相続財産を算定の基礎としただけであるので、これでは足りないことになる。 このように、信託を用いて遺留分減殺請求を防げる、という著者の説明は残念ながら間違いである(新井誠教授は立法過程まで詳細に立ち入って信託法の体系書を著しており、その記述が間違えている可能性はほとんどない。)。読者に無用な期待を抱かせるものである。 以上のように、本書には致命的な間違いが多く見られ、実用に耐えるものとはなっていない。読む際には十分な注意が必要である。
【2016年2月2日 追記】 2016年1月31日に、著者と思われる方が反論されているところ、看過できない記述を含むので、追記する。 著者は「契約行為である信託法が優先適用されないのか?」と述べるが、まず、「契約行為」という用語自体、法律用語としてあまり用いることはないと思われる。「契約」は「法律行為」の一種である。そして、信託行為には、「契約」方式、「遺言」方式、「生前単独行為」方式の3種類がある(前掲『信託法【第4版】』117頁)。信託行為は契約とは限らないのである。したがって、「契約行為である信託法」という著者の記述自体、不正確である。信託法の体系を理解していないものと疑わざるを得ない記述である。 そして、著者は「『間違いである』と断定することは大変危険である」と述べる。しかし、著者の独自の見解が正しいものであるかのごとく読者に喧伝する方が圧倒的に危険である。本書181頁によれば、裁判所が遺留分を認める確率を「万に一つ」としており、著者の独自説が裁判所で採用される可能性が極めて高いと読者に思わせる記述をしている。そのように信じてしまって信託を設定し、後に受益者が訴訟に巻き込まれ、あげくの果てに敗訴した場合、著者はどのように責任を取るつもりであろうか。さらには、仮に法律実務家が、遺留分減殺請求の危険性を十分に説明せずに、そのような信託契約書を作成して報酬を得るようなことがあれば、もはや詐欺に近い所行である。信託が遺留分の規定に抵触することが許されないことは、信託法の大家である新井誠教授が述べているのみならず、信託法改正の際も、当然の前提とされているのである(法務省 法制審議会 信託法部会 第29回議事録)。裁判官は特定の法律を研究しているわけではないため、立案の過程で当然の前提とされていることや、研究者が当然の前提であると考えていることは、専門家を尊重し、そのとおりに判断する可能性が高い。したがって、裁判所もそのとおりに判断する可能性が高いのである。 判例がないならば、立法過程や学説等から判決を予測するのが法律実務家の役目であって、「判例がない」などと逃げるのであれば法律実務家の存在意義は低い。まして、立法過程や学説等を十分に勉強せずに、独自説を正しいものであるかのように喧伝するのは、信託の利用者に大きな損害を与える危険性が高い行為である。 著者は、「私の考え方は既存の学説とは異なるものであるかも知れず、これまで貴殿が学習してこられた知識が及び至らないものであると思います」と述べるが、一介の司法書士の独自説にどれほどの価値があると思っているのか。思い上がりも甚だしいと言わざるを得ない。研究者が言っていることが常に正しいとは限らないが、何十年も民法や信託法を研究してきた研究者の文献を、まずは謙虚に読むことである。 著者は、遺留分制度が「将来の民法改正議論において、改正必要部分として審議されるべき事項であるいうことについては、おそらく誰しもが異論のないところであろう」と述べるが、将来の議論ではなく、現に法制審議会にて審議されているところである。ただし、遺留分規定を削除するかどうかなどということは全く議論になっておらず、遺留分を減らすということも議論されていないようである。 さらに著者は、「法律とは人を苦しめ悩ませるためにあるのではなく、人の願いを叶え、想いを実らせるためにあるものと信じております。」という。しかし、法律の目的や機能は、対立しうる人々の利害の調和であり、特定の立場の者の願いや想いを叶えることではない。憲法に照らして適切なのか否かについていえば、私有財産制も絶対ではなく、

29条2項には「財産権の内容は、公共の福祉に適合するやうに、法律でこれを定める。」とあるのであって、法律で遺留分を定めたとしても、違憲であるとはいえない。 長くなったが、本書を読