読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

武闘派法律家の真実ブログ時代の変化を捉える職人・公益性と事実の意見

巨額の損害賠償請求・司法書士や税理士へ余り過ぎた弁護士が襲いかかる時代 否認や非弁の無料鑑定・公認会計士飯田はじめ03-3984-2333このブログは飯田の個人的意見です

東京司法書士会は何故に東京の詐欺事件の地面師や50件も警視庁では被害があるのに 会員や国民へホームページで注意喚起や警告しないのだろう

東京司法書士会は何故に東京の詐欺事件の地面師や50件も警視庁では被害があるのに 会員や国民へホームページで注意喚起や警告しないのだろう

 

 

虚偽登記と消費者・宅建業者 研究理事・調査研究部長 番場 哲晴

http://www.retio.or.jp/attach/archive/68-046.pdf

はじめに

1 関係者の構図

2 虚偽登記の前提

3 登記官の責任を追求したケース

4 市役所の責任を追求したケース

5 媒介業者の責任を追求したケース

6 司法書士の責任を追求したケース

おわりに

はじめに

2005年の新不動産登記法下で、登記のオンライン化が進行している。登記所の多数がオンライン庁となり、申請も相当数が電子化された。

今年前半の朝鮮総連本部の移転登記騒動は、意外な形で登記への関心を高めさせたと思う。

同じ頃、中間省略登記の問題が業界内では大変な話題になった。本号が発行される11月に、当機構は司法書士界の重鎮である相馬計二先生に、それについての講演をお願いしている。来年早々講演録が発行され、本誌次号でも紹介する予定である。興味のある方はご購入頂きたい。一方、登記ことに虚偽登記に関する判例を、本誌はこれまでに相当数掲載してきた。

消費者が直接虚偽登記事件に遭遇し、虚偽登記の物件を買うことはそう多くはないが、実例はある。近年では、高齢の不動産所有者は知らぬうちに不動産を売られる危険が増している。

業者は元々虚偽登記事件に遭う可能性がある上に、自分自身騙された被害者でありながら損害賠償を求められることもある。関連する事例をまとめてみた。

1 関係者の構図

判例には、幾つものバリエーションがある

が、構図を簡略化すると以下の通りである。

2 虚偽登記の前提

次頁のB、D(以下、次頁のA~Kをその限定なしに使用)は地面師。次が活動の前提。

(1)Bの必要書類確保

Aから買ったと称するBに必要な書類は、

・Aの登記済証

・Aの印鑑証明書

・Aの評価証明書(固定資産税)の3点。

①登記済証

ア 窃 取

Aが盗難に気付いた場合、登記所や司法書士会に通知をすると、ストップがかけられるが、気付かれない間は、次のステップへ移行可能。

イ 偽 造

不動産登記法の時代から移転がない物件は、依然登記済証での移転が可能。

ウ 保証書による代用

旧法下では、登記済証を紛失したとして保証書による代用が可能。新法では廃

止。

②印鑑証明書

ア~エの4通りのうち、アが一番容易か?

ア 市町村外への転居と新しい印鑑登録

a A本人が転出届を出すとする場合

本人確認書類(運転免許証、パスポート、保険証のどれか)が必要。(3)参照。

印鑑登録にも、通常は、写真付き本人確認書類が必要だが、保証人(この人が

既に印鑑登録済み)による場合も可能。

b Aの代理人が転出届を出すとする場合

本人→代理人の委任状、本人と代理人それぞれの本人確認書類が必要。

イ 現住地での印鑑証明書の偽造

法人の印鑑証明は法務局の管轄で、近年特別な用紙が採用されるようになった。個人の印鑑証明は市町村の管轄。市販の用紙の中から、各自治体が判断して購入。コピーで「コピー」と出る以上の高い偽造防止機能のある用紙もあり、それを購入する市役所もある。

ウ 印鑑証明書を不正に受領→印鑑を偽造

印鑑登録証・印鑑登録カード必要。これがあれば(後者は暗証入力)、本人・

代理人が証明書受領可能。登録証・カードの窃取が不可欠か。

自分でパソコンにより印刻することは可能。

印鑑証明書の印影の模刻の注文を印鑑業者が受けると、犯罪(刑法167条)。

エ 廃印届けと新印登録ウと同じ。新印は自由に作ることが可能?

(2)Dの必要書類確保と本人確認への対応

DがA本人又はAの代理人として行動。

  • 記済証

契約時点では、詐欺でない一般の取引でも、取引相手に見せるだけで、手交はしない。(1)と同様、窃取又は偽造したものを、残金支払い時に手交。買主側でチェックできるのは、その時に同席する司法書士だけか。

②印鑑証明書盧②の方式で取得。チェックは①と同じ。

司法書士による本人確認への対応

司法書士は通常はDに対し、「Aの免許証を見せろ」という。その他に、面談を通じて話の矛盾がないかを確認する。

④Aの代理人と称する場合

Aの委任状とA・Dの本人確認書類が必要。偽造するものが増えるが、本人らしく見える人(例えば高齢女性)がいない時はこの方式か?

成年後見

2000年4月に新しい後見制度が導入された。成年後見人は、登記済証や印鑑証明書を偽造することなく、代理権で適法に不動産の売却可能。悪用する人が代金を横領するのも容易。そもそも悪い人が高齢のAの成年後見人に就任することは防止困難。就任資格はなく、親族や弁護士等でなくてもよい。A居住の不動産の時は裁判所の許可が必要だが、それ以外は不要。

(3)本人確認書類の偽造等

①保険証

写真なく、紙質上も偽造容易か。

②運転免許証

ア 偽造の基礎的条件

成人の8割近くが持ち、登記以外の目的でもよく偽造される。(1)②アの場合、住民票記載のAの年齢と似た年恰好の人が必要。

イ 市町村職員又は司法書士によるチェック

a 面前での紙質チェック

紙質等が極端に違えば、偽造は容易に発見可能だが、市町村職員はそこまでし

ているのか?

b 郵送の場合転出する市町村へ郵送でも可能。本人確認書類のコピー提出で足り、紙質チェックなし。

c 番号によるチェック

番号で偽造チェックが可能か下2桁目の数字が計算式と矛盾すると偽造。

偽造者がそういう失態を犯すか?

d ICカード導入後

2007年1月からICチップのついた運転免許証が導入され、5年以内に全て切

り替わる。銀行のICキャッシュカードについては、チップ内の情報偽造の可能性が指摘されている。

IC運転免許証の情報の偽造は困難としても、市町村や司法書士には読取端末

がなく、真正でも不真正でも、外形だけで判断する?

③登記識別情報

新法下の本人確認情報として、登記識別情報がある。174-A23-CBX-53G のような、12桁で、数字とアルファベットを組み合わせたものである。法務省民事局のHP参照。

住基カード

2003年8月から住基カードがIC化。カードとPW入力で、住基ネットワークでの本人確認可能。7 これで印鑑証明を取ることができるようにした或いは印鑑登録カードと一体化させた自治体もある。Bバージョンは写真付き。

3 登記官の責任を追求したケース

逃亡した地面師への賠償請求は効果がない。A→Bの登記申請をした司法書士がBとグルならともかく、まず、登記官の責任を問う。

(1)千葉地判2000年11月30日 判タ1110号150頁 本誌2003年の56号p83 確定 

①経 緯

A所有土地を、Bは1996年3月、偽造したA名義の登記申請委任状、印鑑証明書を使用し、AからBへの1995年12月の「贈与を原因」とした所有権移転登記を行った。Bは、4月に、不動産業者Y2に対し、土地の買取りを申し込む。登記簿を見たY2は、「Aとはあの有名な芸術家か」と尋ねた。Bは当初これを否定したが、後に認めた。土地は、Bから一旦Pに所有権が移った後分筆され、Y2は販売活動開始。買主X1とX2(以下「Xら」)は、Y2の媒介により、

4月に売買契約締結、6月に分筆後の所有権取得。Aの相続人が、1996年7月、XらとBを被告に、Xらへの所有権移転登記の抹消を求める訴えを提起。勝訴し、1997年3月、登記抹消。Xらは、登記官(国Y1)に対し、印鑑証明書に「複製」の文字が浮き出ており、一覧すれば一般人でも判る状況にあるのに看過して登記したとして、売買代金相当額の損害賠償請求訴訟を提起。Y2に対しても損害賠償を求めた。

②判 決

ア 登記官には、不真正な書類による申請を却下する注意義務あり。a 印鑑証明書に「複製」の文字が浮き出ており、一般人でも解る状況。b 登記官はaの不自然さに気付かず、必要な調査もしないまま、登記した過失有り。

イ Y2には、売主が真の所有者かどうか

の確認義務有り。Bが所有者として登記されていることについて疑問を抱かせるような事情がある時は、買主に警告する義務有り。

ウ Y1、Y2ともに敗訴。売買代金相当額の損害賠償を認める。

(2)最判1968年6月27日民集22巻6号1339頁判時523号38頁 判タ225号87頁 当機構発行「不動産取引の紛争と裁判例」 <増補版>(以下<増補版>)p79←東京高判1963年4月24日←東京地判1961年8月29日

①経 緯

1954年10月、買主Xは、売主Bと契約して土地を買受けた。この土地は、同月に、BがAから買受け、その旨の登記があるが、登記済証、印鑑証明書、委任状は偽造。Aが移転登記抹消の訴えを起こし、X敗訴。Bは無資力。Xは国Yに対し、登記済証に「東京区裁判所麹町出張所」の公印があるが、当時は「東京司法事務局麹町出張所」が正しいと主張。

②判 決

原審は、登記官は登記済証の真偽についての調査義務有り。注意義務違反として国の責任認定。最高裁も、登記官は容易に登記済証が不真正と確知可能と判断。

(3)東京地判1979年5月14日 判時942号68頁 判タ392号105頁 <増補版>p80

①経 緯

1972年5月、買主業者Xは、売主Pと契約して、広尾の土地512㎡余を7825万円で購入。この土地は、その直前にPが所有者Aと称するDから購入。Dは地面師で、Aの登記済証(1939年3月1日)、住民票、印鑑証明書、委任状を偽造し、土地をPに売却。Xは、Aの相続人により、移転登記抹消を求められ、和

解。Pは倒産。登記済証の公印「東京區裁判所澁谷出張所印」の「區」が裏字で、一見して偽造と解るとして、国Yに対し、損害賠償請求。

②判 決

登記官の審査に過失ありとして、8611万円の支払いを命令。盻 大阪高判1970年8月31日 訟月16巻11号1274頁←大阪地判1965年11月25日 訟月12

巻4号451頁 <増補版>p81

①経 緯

買主Xは、1962年、売主Bから土地を購入。しかし、この土地はAの所有地を、地面師グループが真正の区長印を転写してAの印鑑証明書を偽造し、登記をBに移した上、Bに成りすまして、Xに売却したもの。Xは、登記官が偽造の印鑑証明書を看過したとして、国Yに対し、損害賠償請求。

②判 決

印鑑証明書の偽造は司法書士が加わり、不動産ブローカーが常習として行った、特別に精緻巧妙なもので、登記官に看破することを期待できない、として請求棄却。

(5)概 観

(4)のように、精緻巧妙な偽造だから、登記官は看破できず、責任なしとする系統の判決が多い。<増補版>のp81~84参照。(1)~(3)は比較的少ない例のようであるが、(4)と(5)は、登記所の先行組織の名称間違いを見逃した失態が大きいとされたのか。

(1)は、「複製」の文字が、B自身でも発覚を危惧するほどだったことが、決め手となったと見るべきか。

なお、(1)のAは岡本太郎氏、1996年1月7日逝去。秘書として長年側にいた方が養女で唯一の相続人であることは、死後広く報道された。「有名人から死の直前に贈与された」物件は、上述のように買い手に余計な興味を起こさせ、詐欺師には危険。Bはそれでも、時価1億円の更地、抵当権なし、という属性を重視した?

4 市役所の責任を追求したケース

福岡高判1996年12月19日 判タ946号183頁←長崎地判1995年9月29日 本誌1998年の39号

①経 緯

Xは、1990年4月、A所有名義の農地をAと称するDから農地法5条の許可を条件として、約4億円で購入し、手付金8千万円を支払って、条件付所有権移転登記。Xは、Dから、Y市役所発行のAの印鑑証明書を示され、DをAと判断。真正のAから、仮登記の抹消請求訴訟を起こされ、X敗訴確定。この印鑑証明書は、Dが偽造したA名義の無線従事者免許証を提示して、A本人を仮装

し、真正なAの印鑑登録を廃止し、新たな印鑑での登録を申請して得たもの。

Xは、Y市役所の国賠請求。

②判 決

ア 無線従事者免許証には、九州電波監理局長の印影、刻印があり、記載事項が同一で、ラミネート加工があったから、Yの職員がこれを信じても過失なし。

イ 請求棄却 

③概 観

本誌39号の判例紹介では、市役所職員の注意義務を厳しく見るもの(東京高判1985年5月29日判時1156号70頁他)と、そうでないもの(名古屋地判1979年7月20日判時944号89頁 <増補版>p86)との2系統がある、と記す。

本判決は、上記名古屋地判と似るが、そちらは、「牧歌的、伝統的社会をベースにした印鑑証明の存立基盤はもはや揺らいでいる」と大議論を展開していた。約30年経っても依然印鑑証明は使われているが。1990年に運転免許証は既に写真一体型だったと記憶し、偽造にも無線従事者証より技術を要した? 無線従事者証の発行数は結構多いが、そういうものが出た時点で、Yは疑うべきか。

5 媒介業者の責任を追求したケース

媒介業者が地面師に騙され、かつ、買主等から責任追求される場合である。

(1) 上記3(1)のケース

ここでは、Y2も媒介業者としての責任が認められた。

(2) 東京高判1983年3月30日 判時1077号71頁 判タ497号114頁←浦和地判1981年9月18日 判時1030号65頁 判タ459号86頁<増補版>p85

この判決では、市役所・国・媒介業者の3者の過失を認めた。

(3)前出名古屋地判1979年7月20日ここでは、地面師グループ・媒介業者・市役所の被告3者のうち、地面師グループ以外の責任を認めなかった。

(4) 概 観

媒介業者が取引に関し注意義務違反を問われることは稀でなく、その一種ともいえる。

6 司法書士の責任を追求したケース通常は、決済の場に同席する司法書士が、

DがA(又はAの代理人)と詐称していないかを確かめる役割を担い、責任も問われる。

(1) 2001年5月10日 判時1768号100頁 本誌2002年の53号p70 控訴

①経 緯

宅建業者Xは、1999年7月、面識のあった宅建業者Pから、Aが相続した土地(登記済み)を紹介された。Xは、販売上、この土地に隣接する、同じくAが相続した道路部分(未登記)を取得する必要もあった。Xが、Pに対し、A本人との面談を求めたが、PはAに成りすましたDらを連れてXの事務所を訪れた。XはPに対し、この土地の登記済証の写しの交付を求めたが、契約当日

までには交付されなかった。Dは土地の売却を身内に知られたくないと称して、本当のA宅への訪問拒否。8月、A(実はD)X間で、売買契約締結し、Xは代金3億円中2億7千万円支払い。この時、司法書士Yが同席し、A名義の運

転免許証(偽造)、登記済証(偽造)等の登記申請添付書類の内容を確認して、不備がない旨を告げた。登記済証には、登記済印の下部に記載されるべき整理番号(コード番号)がなく、受付印が「平成壱壱年」となっていた。

Yは契約締結日に移転登記申請をし、翌日その登記が経由された。後日法務局で登記済証を受領しようとした際、書類は偽造と告げられた。Xは債務不履行による損害賠償として、3億円の支払いをYに対して請求。

②判 決

ア 登記済証に整理番号がなく、「平成拾壱年」とあるべきところが「平成壱壱年」となっていたのを看過したのは、委任契約上の債務不履行

イ Xの過失6割で、損害2億8千万円中の1億1千万円の支払いをYに命令。

(2)東京地判2004年8月6日 判タ1196号120頁 本誌2006年の65号 控訴

①経 緯

2001年12月、宅建業者Xの会長甲(社長乙の父)に対し、不動産ブローカーP兄弟が、1000坪の土地を譲渡担保に入れ、3億5千万円(後2億5千万円に減額)の融資を申し入れ。3日後、Xの専務丙は、Pに話を持ってきた不動産ブローカーQを訪れ、借主はA(実はD)、譲渡担保対象の土地はA所有との説

明を受ける。丙はP、Qと共に現地を見て、2億5千万円以上の価値があると判断し、甲にその旨進言。さらに3日後、P、Q、A(実はD)、Dの債権者R、甲、丙及び司法書士Yが一同に会した。Dは、Aの名でDの写真付きの免許証を、甲、丙に提示。甲、丙はD=Aと信じ、Yに登記書類の確認と不足部分の書類の指示を依頼した。1週間後、乙、丙、D、Yは登記申請書類の確認実施。Yは、実印の印影と印鑑証明書の印影を照合、印鑑証明書の変形菱形の影を確認、透かしと認定。Yは、Aの名前の免許証の写真がDであることを確認。事前に調べていたA宅の電話番号をDが答えたので、A本人と断定。同日、Yが法務局で移転登記申請したと、丙に電話で伝えたので、丙はDに対し、2億2千万円余を支払い。登記済証、印鑑証明書が偽造、登記申請却下。

XはYに対し、債務不履行乃至不法行為に基づき、騙取金額相当の損害賠償請求。

②判 決

ア Yは印鑑証明書の透かしを光源にあてて確認する義務があったが、不履行。

イ Yの接触以前に、X(甲、丙)がDと接触し、XはYに対し、DをAとして紹介。

ウ Yの過失は軽微。報酬は約20万円。過失相殺8割5分で、損害賠償額は3113万円。

(3)大阪地判1987年2月26日 判時1253号83頁 判タ657号151頁 <増補版>p70

①経 緯

買主業者Xは、1985年2月、媒介業者Pらの仲介で、Aの土地を、Qを経由してQから買うことにした。A→Xの移転登記申請を司法書士Yに依頼。法務局が受理したことを確認して、Xは内金2億2千万円を支払い。翌日Aが禁治産者で、この土地を売買したことはなく、Aと称する人物Dは替え玉、登記済証、印鑑証明書は偽造と判明。XはYに対し、損害賠償請求

②判 決

ア 登記済証の登記権利者の住所の誤り、登録免許税の価額の表示の誤り(40.5万円を405万円と誤る)、末尾に大蔵省を抵当権者とする印影あり、など虚偽であることを看過

イ Xも取引を急ぎ、軽率。過失相殺9割。2200万円の支払いをYに命令。

(4)東京地判2003年10月28日 判例マスタ2003-10-28-0008 本誌2005年の61号p88(以下2例は、金融業者からの請求)

①経 緯

1999年8月、金融業者Xは、Pの紹介により、自称Aから融資申し込みを受ける。Xの営業部長甲が、Xを代理して、Aの土地2筆について極度額1億2千万円の根抵当権設定、8千万円貸付けについて合意。その1週間後、甲、自称AことD、Pが銀行支店に参集して、弁済期間、利息(利息制限法違反)等について合意し、Dの口座に所要金額72百万円余を振り込み。司法書士Yは、Xの業務に伴う登記手続きをほぼ専属的に受任していたが、上記銀行支店での会合には不出席。Yは、根抵当権設定仮登記、根抵当権の被担保債務の不履行を条件とする賃借権設定仮登記の手続きの依頼を受け、申請書作成。Xの従業員が申請書を法務局に提出して仮登記はできたが、Aの子供からの連絡により、自称AはA本人ではないことが判明し、本物のAからは仮登記抹消の訴訟が起こされ、X敗訴。Xは、YがAことDの本人確認を怠ったとして、不法行為による損害賠償請求訴訟を提起。

②判 決

ア 自称Aは、Yの面前で、仮装登録印を委任状に押捺。Yはその印と、Dが持参した印鑑証明書の印影を照合し、同一と判断。自称Aに対し、住所・生年月日を質問し、Aと判断。

イ 印鑑証明書、免許証は精緻巧妙な偽造。

ウ 請求棄却

(5) 東京地判2005年11月29日 判タ1232号278頁 本誌本号の判例紹介参照 確定

①経 緯2002年4月、金融業者Xは、Bに対し、4千万円を貸付け。その際、Aの所有する不動産をBに移転し、根抵当権極度額6400万円を設定し、代物弁済予約締結。この不動産には、Pを権利者とする抵当権5200万円設定済み。Xは司法書士Yに対し、

・Pの抵当権の抹消登記

・A→Bの移転登記

・Xの根抵当権設定登記

・Xの代物弁済を原因とする所有権移転請求権仮登記

の4つを依頼。

抵当権抹消登記手続きに用いられた登記済証・委任状が偽造で、Pが抵当権の回復登記手続きの訴訟提起、勝訴。不動産が競売され、落札代金6842万円から、

Pへの配当は6820万円、Xへは22万円。Xは、Yが一連の手続きを補助者であるZに委ね、偽造を看過したとして、融資金から配当を引いた額を損害賠償請求。

②判 決

ア 登記済証には抵当権設定者の住所に明白な誤り有り、Zには真否の確認を怠った過失有り。

イ 自称Aは実は替え玉Dであったが、本人確認は名刺と社員証でなされ、印鑑証明書も用意されていたので、AことDの本人確認についてのZの義務違反なし。

ウ Xの過失相殺、4割。Yの責任は、3978万円の6割、2387万円。

(6) 概 観

過失相殺が大幅に認められてことがあるものの、数十万円程度の報酬額とは桁違いの損害賠償額が、あっさり課せられるケースが多い

怖いほどの重責を担っている職業である、とあらためて実感する。(4)は棄却にはなったが、専属的関係にある司法書士を、利息制限法違反常習と思われる金融業者が訴えたという、コワイ訴訟である。

(5)はZを使ってYを標的にした訴訟の可能性もあるという見方も、これを取り上げた回の不動産取引事例調査検討委員会では披露された司法書士は責任賠償保険に加入していることが多く、それを当てにした訴訟もなくはない、という。

おわりに

IT技術の進歩で新種の本人確認書類が登場するが、登記以外で、まず、新しい悪用法が開発されているのだろうか? 日本の年金事務処理の杜撰さが指摘された際、アメリカの社会保障番号(SocialSecurity Number=SSN)が話題になった。アメリカの映画・TVでは、本人確認でその番号を要求するシーンが非常に多く、もっと重大なケースでは、裁判でマフィアに不利な証言をするために生命が狙われる人には、政府が新住所・新姓名とともに新SSNを提供する。それほど国民に馴染んでいるものだが、電子化されていなくて、紙のカード上の番号である。近年頻繁にフィッシュング詐欺の餌食になっていると聞く。不動産の場合、まず格好の土地・所有者を発掘することが重要なためか、本人確認手段の変容が直ぐに新しいチャンス(?)とはならず、それを使った地面師の行動は未だ報じられていない。当分、従来からの「偽造登記済証+偽造印鑑証明書」方式が続くのだろうか。法務省民事局のHPでは、アメリカの登記制度をごく簡単に紹介しており、それによると本人確認の専門的職業人がいて、会社がある。日本では、詐欺師の可能性がある人と初対面のことも多い司法書士に、それほどの重要な業務を短時間で行わせているように見られる。しかも、詐欺を防止できなかった場合、報酬に比べ過大な責任を負わせているのではないか、と書くと、司法書士の先生方から「同意」と褒められそうだ。日本でも、長年課題となったまま制度的には進展していないエスクローの問題である。

1 当機構では、1992年に相馬先生から「不動産登記犯罪」と題してご講演頂いたこともある。「古典的」な「芸」の数々が紹介されている。

2 最近の実感として、郵便局窓口での金銭受領に際して、形式的にせよ本人確認書類の提示を求められることが多い。銀行預金の引出しの際、本人確認書類は要求されないのが普通のようである。口座名義人が30歳だった時に、実年齢55歳の人間が窓口で本人と称し100万円引出したことについて、東京地判2007年7月10日は、銀行側の過失なしと判断している。過去には逆の判決もあったという。2007年7月11日付け産経新聞

3 2007年7月7日付け朝日新聞は、大阪市福島区の100㎡の駐車場用地に関し、仲間の女を1996年に相続した女性本人と偽らせ、2006年10月に偽造登記済証を使った地面師を逮捕したと報道している。物件所在地管轄の大阪法務局北出張所はこの当時、オンライン化前のようだが、オンライン化後でも可能な手口である。

成年後見人の8割は親族とされる。

5 2007年4月26日付け毎日新聞記事は、次のように報道。(詐欺的)リフォーム工事の営業をしていた暴力団関係者が、ある家の持主が高齢の独居女性と知り、所有するアパートを安値で買い取って転売し、女性に渡した売却代金から徐々に詐取していった。グループの一員の行政書士が、この女性と任意後見契約を結び、行政書士の廃業後も成年後見人を続け、居住不動産(借地上の建物)の売却はしなかったが、金銭の詐取は続けた。これは、成年後見人による不動産の詐欺的売却ではないが、犯人の行動の順番次第ではそうなっていた可能性もあった。家庭裁判所は選任には数か月かけていると聞くが、成年後見人の選任時点で、実質的審査能力を持ち、本件のような詐欺師を排除できるのか、或いは形式的審査能力しか持たないのか。

6 就職や運転時に使用、違反点数の累積回避、

携帯電話の購入、サラ金用等であり、数万円で購入可能という。不動産の場合、現に所有している本人の名での偽造が必要だが、それ以外では詐欺師本人名義、架空人名義でも作られる。

週刊ダイヤモンド2004年10月23日号の櫻井

よしこ氏のコラムでは、住基カードの不正取得の例が紹介されている。偽装結婚用らしい。